Won't you be my neighbor? っていう超マイナー映画にやられた
私は時々一人で映画館に行く。
私の家のすぐそばにマイナーな映画ばかりを多く上映する映画館があり、
そこに好んで通っている。
従業員もシニア(老人)ばかりで、
時が止まった私好みの廃れた雰囲気がある。
"Won't you be my neighbor" at 12:30pm for 1, please. "
と言うと、顔見知りの爺さんがチケットをくれながら、
”Enjoy your movie!”
と歯の欠けたスマイルをくれた。
1時間半後、私はべそ泣きで下界に戻ってきた。
心身は、洗浄され、暖かい気持ちで満たされていた。
久々に、映画に完璧にやられてしまった。
この"Won't you be my neighbor"という映画は、Mr Rogersという、70年代にアメリカで日本のロンパールームのような番組を企画、プロヂュース、主演していた男性のドキュメンタリーである。
番組は必ず、彼がお決まりとして"Wont you be my neighbor?" と歌いながら扉をあけて登場。シンプルなお金をかけないセットと喋るぬいぐるみ。ここまではロンパールームともセサミストリートとも変わらない。
でも、この番組にはかなり強固なメッセージを送っていた。
対象は、普通の子供だけでなく車椅子の障害児、貧困街にすむ子供などもいる。両親の離婚、ケネディ大統領の暗殺事件、黒人の差別、共存、ベトナム戦争、など当時の世の中の日常にある「タブー」を取り上げ、安っぽいぬいぐるみの口を通して、子供にわかりやすく伝えた。上から目線で説教などせず、愛を、正しいことを伝え、不安を取り除いてあげようとした。
映画の最後に彼は言った。
「あなたに愛を与えてくれ、救ってくれた人がこれまでいるでしょう?その人のことを一分考えてください」
この瞬間に映画は止まった。
そして10人くらいしかいない劇場のあちこちからすすり泣きが聞こえてきた。誰もが心優しい誰かを想っていたのだ。私もこんな私をお姫様みたいにちやほやしてくれた心優しき祖母のことを想い、涙が出た。
なぜ、皆泣いていたのだろう?
Mr. Rogersがあまりにもとんでもなく優しくて、ばかで純粋でいい人だから。人をとことん信じて、真面目に愛を語るから。今時こんな人なんていない。胡散臭いと思われるかばかにされるかのどっちかだ。
そんなMr Rogersと自分の子供時代を想いながら、自分の大切な誰かと思いを重ね、懐かしくて嬉しくてさみしくて涙が出たのかもしれない。
そんな感じだった。